奥歯がない部分の歯茎が痛む場合、その原因が歯茎だけでなく、「顎の骨」に関連している可能性も考えられます。歯を支えている顎の骨に何らかの問題が生じると、それが歯茎を通して痛みとして感じられることがあります。奥歯がない部分の顎の骨に関連する痛みの原因について解説します。まず、抜歯後の治癒過程で起こりうる問題として、「骨棘(こつきょく)」や「骨隆起(こつりゅうき)」の存在が挙げられます。歯を抜いた後、顎の骨は徐々に治癒し、形が整っていきますが、その過程で骨の表面に鋭く尖った部分が残ってしまうことがあります。これが骨棘や骨隆起です。これらの尖った骨が、その上を覆っている歯茎の粘膜を内側から刺激し、特に食事の際や入れ歯が当たった時などに、チクチクとした痛みや圧迫感を感じさせることがあります。次に、「残根(ざんこん)」も痛みの原因となることがあります。抜歯の際に、歯の根の一部が折れて顎の骨の中に残ってしまうことがあります。この残根が、後になって感染を起こしたり、歯茎を刺激したりして、痛みや腫れを引き起こすことがあります。レントゲン写真で確認することで診断できます。また、稀なケースではありますが、「顎骨嚢胞(がっこつのうほう)」や「顎骨腫瘍(がっこつしゅよう)」といった病気が潜んでいる可能性も否定できません。嚢胞は、顎の骨の中に液体が溜まった袋状のできもので、徐々に大きくなることがあります。腫瘍には良性のものと悪性のものがありますが、どちらも大きくなると周囲の組織を圧迫したり、神経を刺激したりして、痛みやしびれ、歯茎の腫れなどを引き起こすことがあります。これらの病気は、初期には自覚症状がないことが多く、レントゲン撮影やCT検査などで偶然発見されることもあります。さらに、歯がない状態が長く続くと、その部分の顎の骨が徐々に痩せていく(吸収される)ことがあります。骨が薄くなると、その上にある歯茎も薄くなり、外部からの刺激に敏感になったり、入れ歯の安定が悪くなって痛みが出やすくなったりすることがあります。その他、顎関節症の症状が、奥歯がない部分の痛みとして感じられる(関連痛)こともあります。このように、奥歯がない部分の痛みは、顎の骨に起因することも考えられます。