抜歯後にドライソケットを発症し、激しい痛みに悩まされているものの、歯科医院に行く時間がない、あるいは歯科治療が苦手でなかなか足が向かないという方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合、「ドライソケットは自然に治るのだろうか?」という疑問が浮かぶことでしょう。結論から言うと、ドライソケットは放置していても、最終的には自然に治癒する「可能性」はあります。人間の体には自然治癒力が備わっており、露出した骨の表面にも徐々に新しい肉芽組織が形成され、やがて上皮で覆われていくからです。しかし、自然治癒に任せることには、いくつかの大きな問題点とリスクが伴います。まず、最も大きな問題は「治癒までの期間と痛み」です。歯科医院で適切な処置を受ければ、比較的早期に痛みが軽減し、治癒もスムーズに進むことが多いですが、自然治癒に任せた場合、非常に強い痛みが長期間(数週間以上)続く可能性があります。この間、食事や会話、睡眠にも支障をきたし、日常生活の質(QOL)が著しく低下することは避けられません。鎮痛剤も効きにくいことが多いため、つらい状態を我慢し続けることになります。次に、「感染のリスク」です。ドライソケットは骨が露出しているため、口腔内の細菌に感染しやすい状態です。自然治癒を待つ間に感染が進行すると、炎症がさらに悪化し、化膿したり、顎の骨にまで炎症が及ぶ骨髄炎などのより深刻な状態に発展したりする可能性もゼロではありません。こうなると、治療はさらに複雑で長期間に及ぶことになります。また、「治癒の遅延や不完全な治癒」のリスクもあります。適切な処置が行われないと、抜歯窩の清掃が不十分であったり、異物が混入していたりすることで、正常な治癒が妨げられ、治癒までに通常よりも長い時間がかかったり、治癒したとしても組織の形態が不自然になったりする可能性があります。さらに、ドライソケットと自己判断していても、実は別の病気(例えば、初期の口腔がんなど)である可能性も完全に否定することはできません。専門家による診断を受けずに放置することは、重大な疾患の見逃しに繋がる危険性もはらんでいます。これらのリスクを考慮すると、ドライソケットが疑われる場合は、自然治癒を期待して放置するのではなく、速やかに歯科医師の診察を受け、適切な治療を受けることが、最も賢明で安全な選択と言えるでしょう。