歯周病は、日本人の多くが罹患していると言われる口腔疾患であり、進行すると歯を支える組織が破壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともある恐ろしい病気です。この歯周病を予防し、進行を食い止めるために最も重要なのが「プラークコントロール」です。プラークコントロールと歯周病予防の密接な関係について解説します。歯周病の直接的な原因は、歯の表面や歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)に潜む「歯周病原細菌」を含むプラーク(歯垢)です。これらの細菌は、毒素や酵素を産生し、まず歯肉に炎症を引き起こします(歯肉炎)。歯肉炎の段階では、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりする程度の症状ですが、この時点で適切なプラークコントロールを行えば、健康な状態に戻ることが可能です。しかし、歯肉炎が放置され、プラークが歯周ポケットの奥深くに侵入していくと、歯を支える歯槽骨や歯根膜といった歯周組織が破壊され始めます(歯周炎)。歯周炎に進行すると、歯周ポケットが深くなり、歯がグラグラしたり、歯茎から膿が出たりするようになります。そして、最終的には歯を支えきれなくなり、自然に抜け落ちてしまうこともあるのです。この一連の歯周病の進行プロセスにおいて、全ての段階でプラークが深く関与しています。したがって、歯周病を予防するためには、この原因物質であるプラークを徹底的に除去し、その蓄積をコントロールすることが最も効果的な手段となります。具体的には、毎日の丁寧な歯ブラシによるブラッシングに加え、歯ブラシだけでは届きにくい歯周ポケット内や歯と歯の間のプラークを除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシを必ず使用することが重要です。特に、歯周ポケット内は歯周病原細菌の温床となりやすいため、毛先の細い歯ブラシで歯と歯茎の境目を意識して磨いたり、歯間ブラシを歯周ポケットに優しく挿入したりするなどの工夫が必要です。また、定期的に歯科医院を受診し、専門家によるプラークコントロール(PMTCやスケーリング・ルートプレーニングなど)を受けることも、歯周病予防には不可欠です。歯科医師や歯科衛生士は、自分では落としきれないプラークや歯石を除去し、正しいセルフケアの方法を指導してくれます。プラークコントロールを徹底することが、歯周病から歯を守るための最も確実な道なのです。
プラークコントロールと歯周病予防