近年、インプラント治療の普及とMRI検査の重要性の高まりに伴い、両者の共存は医療現場における重要なテーマの一つとなっています。今回は、インプラントとMRIの安全性や最新の動向について、放射線科専門医にお話を伺いました。「まず、患者さんから最も多く寄せられる質問は、『インプラントが入っていてもMRI検査は受けられますか?』というものです。これに対する一般的な回答としては、『多くの場合、可能です』とお答えしています」と医師は語ります。その背景には、インプラント材料の進化があると言います。「現在の歯科用インプラントや整形外科領域で用いられる人工関節のほとんどは、チタンまたはチタン合金製です。チタンは非磁性体または弱磁性体であり、MRIの強力な磁場による影響、例えば発熱や移動といったリスクが極めて低い素材です。そのため、適切な条件下であれば安全にMRI検査を実施できます」。しかし、医師は続けて注意を促します。「ただし、『全て安全』というわけではありません。インプラントの種類、埋め込まれた部位、そしてMRI装置の磁場の強さによっては、画像の歪み(アーチファクト)が問題となることがあります。特に頭頸部や脊椎など、インプラント近傍の精密な診断が必要な場合には、アーチファクトが診断の妨げになることもあり得ます」。最近では、MRI検査時のアーチファクトを低減する技術も進歩しています。例えば、金属アーチファクト低減シーケンス(MARSなど)と呼ばれる特殊な撮影法を用いることで、金属周囲の画像の歪みをある程度抑えることが可能になってきました。また、インプラントメーカー側でも、よりMRI適合性の高い素材の開発やデザインの改良が進められています。「重要なのは、患者さんご自身がどのようなインプラントを使用しているかを把握し、検査前に正確な情報を医療機関に提供することです。インプラントカードの携帯は非常に有効です。我々医療従事者も、提供された情報に基づいて、安全プロトコルに従い、個々の患者さんに最適な検査方法を選択しています」。
医師に聞くインプラントとMRIの最新事情