奥歯を抜いた後や、もともと奥歯がない部分の歯茎が痛むという経験をされる方がいらっしゃいます。歯がないのになぜ痛むのか、不思議に思われるかもしれません。その痛みには、いくつかの原因が考えられます。まず、抜歯後間もない時期であれば、「抜歯後の正常な治癒過程の痛み」や、合併症としての「ドライソケット」が考えられます。抜歯は外科的な処置であり、歯茎や顎の骨に少なからずダメージが加わるため、術後数日間は痛みや腫れが生じることが一般的です。しかし、痛みが抜歯後2~4日目頃から再び強くなり、ズキズキとした激しい痛みが続く場合は、ドライソケット(抜歯窩の血餅が失われ骨が露出する状態)の可能性があります。これは強い痛みを伴い、歯科医院での処置が必要です。次に、歯がない部分の「歯茎の炎症(歯肉炎・歯周炎)」も痛みの原因となります。歯がないからといって、その部分の歯茎のケアを怠っていると、隣接する歯から細菌が侵入したり、食べかすが溜まったりして、歯茎に炎症が起こることがあります。歯茎が赤く腫れたり、出血したり、押すと痛みを感じたりします。また、歯がない部分に「入れ歯(義歯)」を使用している場合、その入れ歯が合っていなかったり、調整が不十分だったりすると、歯茎に強く当たって傷ができ、痛みを生じることがあります。特に新しい入れ歯を使い始めた時や、長期間使用している入れ歯で顎の骨が痩せてきた場合などに起こりやすいです。さらに、歯がない部分の「顎の骨の問題」も考えられます。抜歯後に顎の骨が治癒する過程で、骨の尖った部分が残っていたり(骨隆起や骨棘)、あるいは顎の骨の中に歯の根の一部が残っていたり(残根)すると、それが歯茎を刺激して痛みを感じることがあります。稀なケースですが、顎の骨の中に嚢胞(のうほう:液体が溜まった袋状のもの)や腫瘍ができていて、それが大きくなることで周囲の組織を圧迫し、痛みとして感じられることもあります。その他、隣の歯が傾いてきたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりして、歯がない部分の歯茎に不自然な力がかかったり、噛み込んだりすることで痛みが生じることもあります。このように、奥歯がないところが痛む原因は様々です。自己判断せずに、まずは歯科医院を受診し、原因を特定してもらうことが大切です。
奥歯がない部分が痛む主な原因とは