奥歯がない部分が痛むにも関わらず、「歯がないのだからそのうち治るだろう」「痛みが我慢できる程度だから大丈夫」と放置してしまうのは、実は非常に危険なことです。痛みの原因によっては、放置することで症状が悪化したり、より深刻な問題に発展したりする可能性があります。奥歯がない部分の痛みを放置するリスクについて解説します。まず、痛みの原因が「感染症(歯肉炎、歯周炎、ドライソケットなど)」である場合、放置すると感染が広がり、炎症が悪化する可能性があります。歯茎の腫れや出血がひどくなったり、膿が出たり、強い口臭が発生したりすることがあります。重症化すると、顎の骨にまで炎症が及ぶ骨髄炎などの深刻な状態を引き起こすこともあり得ます。また、口腔内の細菌が血流に乗って全身に運ばれ、糖尿病や心臓病といった全身疾患のリスクを高めることも知られています。痛みの原因が「入れ歯の不適合」である場合、我慢して使い続けると、歯茎に慢性的な刺激が加わり続け、傷や潰瘍が悪化したり、治りにくくなったりします。また、不適合な入れ歯は、残っている歯や顎関節にも不自然な負担をかけ、新たな問題を引き起こす可能性があります。痛みの原因が「隣の歯の問題(虫歯、歯周病、傾斜、挺出など)」である場合、放置するとその問題がさらに進行し、最終的にはその歯も失うことになりかねません。歯がないスペースに向かって歯が倒れ込んだり、伸びてきたりするのを放置すると、噛み合わせ全体のバランスが崩れ、咀嚼機能の低下や顎関節症のリスクを高めます。もし、痛みの原因が「顎の骨の異常(骨棘、残根、嚢胞、腫瘍など)」であった場合、放置することで症状が悪化するだけでなく、嚢胞や腫瘍の場合は、周囲の健康な組織を破壊しながら大きくなっていく可能性があります。特に悪性腫瘍の場合は、早期発見・早期治療が非常に重要であり、放置は命に関わる事態を招きかねません。痛みの原因が「神経痛」であったとしても、適切な診断と治療を受けなければ、つらい痛みが慢性化し、日常生活の質(QOL)を著しく低下させることになります。このように、奥歯がない部分の痛みを放置することには、様々なリスクが伴います。痛みは体からの重要なサインです。