近年、医療技術の進歩は目覚ましく、体内にインプラントを埋め込んでいる方も増えています。歯科インプラントや人工関節、ペースメーカーなどがその代表例です。一方で、病気の診断に不可欠なMRI検査も広く普及しています。MRI検査は強力な磁場と電波を利用して体内の詳細な画像を得る検査ですが、この「強力な磁場」が金属製のインプラントと相互作用し、問題を引き起こす可能性が指摘されています。そのため、インプラントを装着している方がMRI検査を受ける際には、特別な注意が必要となります。インプラントの材質がMRI検査の可否を左右する重要な要素です。現在主流となっている歯科インプラントや整形外科領域の人工関節の多くは、チタンまたはチタン合金で作られています。チタンは非磁性体(磁石にくっつかない)あるいは弱磁性体であるため、MRIの強力な磁場による影響を受けにくいとされています。そのため、チタン製のインプラントであれば、多くの場合MRI検査を受けることが可能です。しかし、過去に使用されていたインプラントの中には、ステンレス鋼など強磁性体(磁石に強く引き寄せられる性質)の金属が使われているものもあり、この場合はMRI検査が禁忌となることがあります。強磁性体のインプラントが体内にある状態でMRI検査を受けると、インプラントが発熱したり、移動したり、画像の著しい乱れ(アーチファクト)を引き起こし、正確な診断を妨げるだけでなく、患者さん自身に危険が及ぶ可能性もあります。従って、インプラントを装着している方がMRI検査を受ける前には、必ず担当医や検査技師にその旨を申告し、インプラントの種類、材質、埋め込んだ時期や医療機関などの情報を正確に伝えることが極めて重要です。インプラント手帳や治療を受けた際の資料があれば持参すると良いでしょう。医療機関側も、これらの情報に基づいて検査の可否を慎重に判断します。場合によっては、インプラントの種類が特定できない場合や、安全性が確認できない場合には、MRI検査を避け、CT検査や超音波検査など他の画像診断法を検討することもあります。自己判断は絶対にせず、必ず医療専門家の指示に従うようにしてください。
MRI検査とインプラント共存の基礎知識