顎の痛みや不調を感じた際、「何科を受診すれば良いのだろう」と迷う方は少なくありません。特に、耳の近くに痛みを感じたり、耳鳴りやめまいを伴ったりする場合、「耳鼻咽喉科」も選択肢の一つとして頭に浮かぶかもしれません。実際に、耳鼻咽喉科で顎の不調を診てもらえるケースはあります。耳鼻咽喉科は、耳、鼻、喉、そしてこれらの器官に隣接する顔面や頸部の疾患を専門とする診療科です。顎関節は耳のすぐ近くに位置しているため、顎関節のトラブルが耳の症状として現れることがあります。例えば、顎関節症によって顎関節周囲の組織が炎症を起こしたり、顎の筋肉が緊張したりすることで、耳の閉塞感、耳鳴り、軽度のめまい、耳の痛みなどを感じることがあります。これは、顎関節と耳の神経が一部共通しているため、痛みが耳に放散する「関連痛」として現れることがあるためです。そのため、顎の痛みと共に耳の症状を強く訴える患者さんの場合、耳鼻咽喉科を受診し、まずは耳の疾患が原因ではないかを確認することは有効なアプローチとなります。耳鼻咽喉科医は、耳の検査(聴力検査、平衡機能検査など)を行い、中耳炎や外耳炎、突発性難聴といった耳そのものの病気がないかを診断します。もし耳に異常がなく、顎関節症が原因であると判断された場合は、歯科口腔外科への紹介が適切となります。耳鼻咽喉科で顎の不調を診る範囲は、主に耳の症状との関連性が高い場合や、首や喉のリンパ節の腫れなど、炎症性の疾患が原因である可能性を疑うケースが多いです。しかし、顎関節そのものの診断や、噛み合わせの問題、顎関節症の専門的な治療(スプリント療法や外科的治療など)は、基本的に歯科口腔外科の専門領域となります。そのため、もし耳鼻咽喉科を受診して耳に異常がないと診断された場合でも、顎関節症の症状が続くようであれば、改めて歯科口腔外科を受診することをお勧めします。早期に適切な専門医を受診し、正確な診断を受けることが、顎の痛みを改善し、快適な生活を取り戻すための第一歩となります。迷った場合は、まずはかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのも良い方法です。