抜歯後の合併症として知られるドライソケットは、経験した人にしかわからないほどの強い痛みを伴うつらい状態です。このドライソケットを正しく治すためには、まずそれがどのような状態なのかを理解することが不可欠です。通常、抜歯を行うと、歯が抜けた穴(抜歯窩)には血液が溜まり、血餅(けっぺい)と呼ばれる血の塊ができます。この血餅は、抜歯窩を保護し、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぎ、治癒を促進するためのいわば「自然のかさぶた」のような役割を果たします。しかし、何らかの原因でこの血餅が十分に形成されなかったり、早期に剥がれてしまったりすると、抜歯窩の骨が直接口腔内に露出してしまう状態になります。これがドライソケットです。骨が剥き出しになることで、食べ物や飲み物、空気などの刺激が直接神経に伝わりやすくなり、ズキズキとした非常に強い持続的な痛みが生じます。この痛みは、抜歯後2~4日目頃から現れることが多く、通常の抜歯後の痛みとは異なり、鎮痛剤があまり効かない、あるいは効いても一時的であるという特徴があります。また、抜歯窩からは特有の悪臭がしたり、味覚異常を感じたりすることもあります。鏡で抜歯窩を見てみると、正常であれば赤黒い血餅で覆われているはずの部分が、白っぽく骨が見えていたり、空っぽの穴のように見えたりします。ドライソケットになりやすい要因としては、喫煙、下の親知らずの抜歯、抜歯後の強いうがい、複雑な抜歯手術などが挙げられます。これらの要因は、血餅の形成を妨げたり、剥がれやすくしたりするリスクを高めます。ドライソケットは、放置していても自然に治癒することもありますが、治癒までに時間がかかり、その間強い痛みが続くため、適切な治療を受けることが推奨されます。もし抜歯後に上記のような症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに抜歯を行った歯科医院を受診し、診断と治療を受けることが大切です。
ドライソケットとは何か基本の理解