歯周病は、成人の多くが罹患していると言われる静かに進行する病気で、最終的には歯を失う原因ともなり得ます。歯周病の予防と進行抑制には、日々の徹底したプラークコントロールが不可欠ですが、マウスウォッシュ(デンタルリンス)もその補助として重要な役割を果たします。歯科医師が歯周病ケアを目的としてマウスウォッシュを推薦する際に注目する有効成分とその働きについて解説します。まず、歯周病の直接的な原因である「歯周病原細菌への対策」が最も重要です。そのため、強力な「殺菌成分」や「抗菌成分」が配合されている製品が推奨されます。代表的な殺菌成分には、「塩化セチルピリジニウム(CPC)」があります。CPCは、口腔内の浮遊性細菌に対して優れた殺菌効果を示し、歯周病原因菌の増殖を抑制します。また、バイオフィルム(細菌が形成する膜状の塊)の形成を抑える効果も期待できます。「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」も、歯周病ケアに適した殺菌成分です。IPMPは、バイオフィルムの内部に浸透しやすい性質を持ち、歯周ポケットの奥深くに潜む歯周病原細菌にも効果的に作用するとされています。「クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)」は、非常に高い殺菌効果と持続性を有しており、特に歯周病の症状が進行している場合や、外科処置後などに歯科医師の指導のもとで処方されることが多い成分です。ただし、長期間の使用で歯への着色が見られることがあるため、使用には注意が必要です。次に、「歯肉の炎症を抑える成分」も重要です。歯周病は歯肉の炎症から始まるため、これを鎮めることは症状の緩和と進行抑制に繋がります。「グリチルリチン酸ジカリウム」や「トラネキサム酸」は、代表的な抗炎症成分で、歯肉の腫れや出血を抑える効果が期待できます。また、「歯肉の血行を促進し、組織を修復する成分」として、「ビタミンE(酢酸トコフェロール)」や「アラントイン」などが配合されている製品もあります。これらは、弱った歯肉の抵抗力を高め、健康な状態へと導くのを助けます。歯科医師は、患者さんの歯周病の進行度や症状、口腔内の状態などを総合的に評価し、これらの有効成分が適切に配合されたマウスウォッシュを選定します。使用タイミングは、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスで丁寧にプラークを除去した後が最も効果的です。
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