口を開け閉めする際に顎がカクカク鳴る、口が大きく開けられない、顎やその周辺に痛みを感じる。これらの症状に心当たりがあるなら、それは顎関節症かもしれません。顎関節症は、顎の関節やその周りの筋肉に問題が生じる病気で、多くの人が経験する可能性のある身近な疾患の一つです。原因は一つではなく、噛み合わせの異常、歯ぎしりや食いしばりの癖、ストレス、姿勢の悪さ、外傷など、複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。症状が軽いうちは自然に治まることもありますが、放置すると悪化し、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。顎関節症の疑いがある場合、どの医療機関を受診すればよいのでしょうか。主に相談すべきは、歯科医師または口腔外科医です。特に顎関節症の診断と治療を専門的に行っている歯科医院や、大学病院などの口腔外科では、より詳しい検査や専門的な治療を受けることができます。一般的な歯科医院でも初期の診断やマウスピース(スプリント)を用いた治療などを行っているところは多いですが、症状が複雑であったり、改善が見られなかったりする場合には、専門医を紹介されることもあります。専門医のもとでは、まず問診や触診、レントゲン撮影、場合によってはMRI検査などを行い、顎関節の状態や痛みの原因を詳しく調べます。その上で、それぞれの患者さんに合った治療法が提案されます。治療法には、生活習慣の改善指導、薬物療法、マウスピース療法、理学療法、そして稀ですが外科手術などがあります。多くの場合、保存的な治療で症状の改善が見込めます。大切なのは、自己判断で放置したり、間違った対処法を試したりせず、早めに専門医に相談することです。顎の痛みや不快感は、食事や会話といった日常的な動作にも影響を与えるため、QOL(生活の質)を大きく低下させる可能性があります。専門医の的確な診断と治療を受けることで、症状の緩和と再発防止を目指しましょう。