ドラッグストアなどのオーラルケア用品売り場には、「液体歯磨き」と「マウスウォッシュ(洗口液、デンタルリンス)」という、容器の形状も似ていて、どちらも液体タイプの製品が並んでいます。これらは一見すると同じように見えるかもしれませんが、その目的と使い方には明確な違いがあります。歯科医師の立場から、この二つの製品の違いと、それぞれの適切な活用法について分かりやすく解説します。まず、「液体歯磨き」についてです。これは、その名の通り「歯磨き粉の液体バージョン」と捉えることができます。従来の練り歯磨き粉と同様に、歯を磨く際に使用することを目的としています。多くの液体歯磨きには、研磨剤が含まれていないか、含まれていてもごく少量であるという特徴があります。その代わりに、発泡剤や、虫歯予防のためのフッ素、歯周病予防のための殺菌成分や抗炎症成分といった薬用成分が配合されています。液体歯磨きの基本的な使い方は、適量を口に含んで口腔内全体に行き渡らせた後、歯ブラシを使って通常通りブラッシングを行います。つまり、液体歯磨きは「ブラッシングと併用する」ことが前提の製品であり、歯磨き粉の代わりとして使用するものです。使用後は、水ですすぐのが一般的です。一方、「マウスウォッシュ(洗口液、デンタルリンス)」は、主に「歯磨きの仕上げ」や「歯磨きができない時の補助的なオーラルケア」として使用されることを目的としています。マウスウォッシュには、研磨剤は含まれていません。薬用成分(殺菌成分、抗炎症成分、フッ素、口臭予防成分など)が配合されており、適量を口に含んでブクブクうがいをし、口腔内全体に行き渡らせてから吐き出すことで、これらの有効成分の効果を期待します。マウスウォッシュは、基本的にはブラッシングでプラークを物理的に除去した後に使用し、口腔内を殺菌したり、歯質を強化したり、口臭を予防したりといった、プラスアルファのケアを担います。