「プラークコントロール」という言葉を、歯科医院や歯磨き粉のCMなどで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、お口の健康を維持するために非常に重要な概念です。では、プラークコントロールとは具体的に何を指すのでしょうか。その基本的な考え方について解説します。プラークコントロールとは、簡単に言えば「歯の表面に付着するプラーク(歯垢)の量を、病気を引き起こさないレベルまで減らし、それを維持すること」です。プラークは、単なる食べかすではありません。これは、口の中に存在する様々な細菌が、歯の表面に集まって塊を形成し、ネバネバとした膜(バイオフィルム)状になったものです。プラーク1ミリグラム中には、数億から数十億もの細菌が存在すると言われています。このプラークが、虫歯や歯周病といった口腔二大疾患の直接的な原因となるのです。虫歯の原因菌(主にミュータンス菌など)は、プラークの中で糖分を分解して酸を作り出し、その酸によって歯の表面が溶かされて虫歯になります。また、歯周病の原因菌は、プラークの中で毒素を出し、歯肉に炎症を引き起こしたり、歯を支える骨(歯槽骨)を破壊したりして歯周病を進行させます。したがって、これらの病気を予防し、口腔内の健康を保つためには、プラークを効果的に除去し、その蓄積をコントロールすることが不可欠なのです。プラークコントロールの主な手段は、「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」の二つに大別されます。セルフケアとは、患者さん自身が日常的に行うケアのことで、歯ブラシによるブラッシングが基本となります。さらに、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を適切に使用することで、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間や歯周ポケット内のプラークも除去することができます。一方、プロフェッショナルケアとは、歯科医師や歯科衛生士などの専門家が歯科医院で行うケアのことです。定期的な歯科検診や、専門的な器械を使った歯のクリーニング(PMTC)、そして個々の患者さんに合わせたブラッシング指導などがこれにあたります。プラークコントロールは、一度行えば終わりというものではありません。毎日の継続的な努力と、定期的な専門家によるチェックとケアが組み合わさることで、初めて効果的に達成できるものなのです。