抜歯後にドライソケットと思われる強い痛みに見舞われた際、市販薬で何とか治せないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言うと、ドライソケットを市販薬だけで根本的に治すことは非常に困難であり、推奨されません。ドライソケットは、抜歯窩の血餅が失われ、骨が露出してしまっている状態です。この露出した骨を保護し、感染を防ぎ、治癒を促進するためには、歯科医院での専門的な処置(抜歯窩の清掃、薬剤填入など)が不可欠です。市販薬には、このような処置を行う能力はありません。ただし、市販薬が全く役に立たないというわけではありません。歯科医院を受診するまでのつなぎとして、痛みを一時的に和らげる目的であれば、市販の鎮痛剤を使用することは可能です。ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの成分を含む鎮痛剤は、炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。しかし、ドライソケットの痛みは非常に強いため、市販の鎮痛剤では十分に効果が得られないことも少なくありません。また、市販のうがい薬の中には、殺菌成分を含むものがあり、口腔内を清潔に保つという意味では補助的に役立つ可能性はあります。しかし、アルコール成分を多く含むものや、刺激の強いものは、かえって傷口を刺激し、症状を悪化させる可能性もあるため、使用には注意が必要です。もし使用する場合は、ノンアルコールで刺激の少ないタイプを選び、優しく口に含む程度にしましょう。強いうがいは絶対に避けてください。重要なのは、これらの市販薬はあくまで対症療法であり、ドライソケットそのものを治す治療薬ではないということを理解しておくことです。自己判断で市販薬に頼り続け、歯科医院の受診が遅れてしまうと、症状が悪化したり、治癒が遅れたりする可能性があります。また、まれに口内炎とドライソケットを混同してしまうケースもありますが、両者は全く異なる状態であり、対処法も異なります。抜歯後に激しい痛みや悪臭などの症状が現れた場合は、「ドライソケットかもしれない」と疑い、できるだけ早く抜歯を行った歯科医院を受診することが、最も確実で安全な治し方です。歯科医師の適切な診断と治療を受けることが、つらい痛みからの早期解放に繋がります。
ドライソケット市販薬で治せるか