ベロにできものができると、多くの方が「口内炎だ」と判断しがちです。確かに口内炎は非常によく見られる症状ですが、実は口内炎と似たような見た目や症状を示す他の病気も存在します。自己判断で放置してしまうと、適切な治療の機会を逃してしまう可能性もあるため、注意が必要です。ベロの口内炎と間違えやすい主な病気について解説します。まず、「ヘルペス性口内炎(口唇ヘルペスを含む)」です。これは単純ヘルペスウイルスへの感染が原因で起こり、小さな水ぶくれ(水疱)が多数でき、それらが破れてびらんや潰瘍を形成します。特に初感染の場合は、高熱や強い痛みを伴うことが多く、歯茎全体が赤く腫れ上がることもあります。アフタ性口内炎とは異なり、ウイルス感染なので抗ウイルス薬による治療が必要となります。「手足口病」も、主に乳幼児に流行するウイルス感染症ですが、大人もかかることがあります。口の中に水疱性の発疹ができるほか、手のひら、足の裏、お尻などにも発疹が現れます。口の中の症状は口内炎と似ていますが、全身症状を伴う点が特徴です。「口腔カンジダ症」は、口腔内に常在するカンジダという真菌(カビの一種)が、免疫力の低下や抗生物質の長期服用、唾液の減少などをきっかけに異常増殖することで起こります。白い苔のようなものが舌や頬の粘膜に付着し、拭うと剥がれ落ちて下から赤い粘膜が現れるのが特徴です。ヒリヒリとした痛みを伴うこともあります。治療には抗真菌薬が用いられます。「白板症(はくばんしょう)」は、口腔粘膜にできる白い板状あるいは斑状の病変で、こすっても剥がれないのが特徴です。前がん病変(がん化する可能性のある病変)の一つとされており、注意深い経過観察や、場合によっては組織検査(生検)が必要となることがあります。「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」は、口腔粘膜に白いレース状や線状の模様、あるいは白い斑点として現れる慢性炎症性疾患です。びらんや潰瘍を伴うと痛みを引き起こします。そして、最も注意しなければならないのが「舌がん」です。初期の舌がんは、口内炎と見分けがつきにくいことがあります。しかし、舌がんは、なかなか治らない(2週間以上)、しこりがある、出血しやすい、境界が不明瞭で徐々に大きくなる、といった特徴を持つことがあります。
ベロの口内炎と間違えやすい病気