奥歯がない部分が痛むという症状があるものの、歯科医院でレントゲン検査や口腔内の診察を受けても、歯茎や顎の骨、隣の歯などに明らかな異常が見つからない場合があります。そのような時に考えられる可能性の一つとして、「神経痛」が挙げられます。神経痛は、特定の神経が何らかの原因で刺激されたり、損傷したりすることで、その神経の支配領域に発作的な激しい痛みが生じる状態です。奥歯がない部分の痛みとして現れる神経痛には、いくつかの種類があります。代表的なものとしては、「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」があります。三叉神経は、顔面の感覚(触覚、痛覚、温度覚など)や咀嚼筋の運動を司る神経で、3つの枝に分かれています。そのうち、下顎に分布する枝(下顎神経)が障害されると、下の奥歯や顎、唇などに、電気が走るような、あるいは焼けつくような激しい痛みが、数秒から数分間、繰り返し起こることがあります。この痛みは、洗顔や歯磨き、食事、会話、あるいは顔に風が当たるなどの些細な刺激で誘発されることが多いのが特徴です。歯がない部分の痛みとして感じられることも少なくありません。また、「非定型歯痛(ひていけいしつう)」や「非定型顔面痛(ひていけいがんめんつう)」といった、原因が特定しにくい慢性的な痛みも、奥歯がない部分の痛みとして現れることがあります。これらは、歯科的な異常が見当たらないにも関わらず、持続的な鈍い痛みや、ズキズキとした痛みを感じる状態で、ストレスや精神的な要因が関与していることもあります。さらに、稀ではありますが、「帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)」も考えられます。過去に顔面に帯状疱疹(ヘルペスウイルスの一種が原因で起こる発疹と痛み)を発症したことがある場合、そのウイルスの影響で神経が損傷し、帯状疱疹が治った後も、持続的な痛みや感覚異常が残ることがあります。これが三叉神経の領域に起これば、歯や歯茎の痛みとして感じられることがあります。これらの神経痛の診断は、非常に専門的な知識と経験が必要であり、歯科医師だけでなく、神経内科医やペインクリニックの医師との連携が必要になることもあります。もし、原因不明の奥歯がない部分の痛みが続く場合は、神経痛の可能性も視野に入れ、専門医に相談することを検討しましょう。