奥歯がない部分が痛む場合、その原因は必ずしもその場所自体にあるとは限りません。隣接する歯や、噛み合う相手の歯の状態が、歯がない部分の痛みに影響を与えている可能性も考えられます。特に、歯を失ったまま長期間放置していると、周囲の歯に様々な変化が起こり、それが痛みの引き金になることがあります。まず、歯がない部分の「隣の歯が傾いてくる(傾斜)」ことがあります。歯は互いに支え合って並んでいますが、一本でも歯がなくなると、そのスペースに向かって隣の歯が徐々に倒れ込んできます。傾いてきた歯は、清掃がしにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、傾くことで噛み合わせのバランスが崩れ、特定の場所に不自然な力がかかったり、歯がない部分の歯茎にぶつかったりして、痛みを感じることがあります。次に、「噛み合う相手の歯が伸びてくる(挺出:ていしゅつ)」ことも問題となります。例えば、下の奥歯がない場合、噛み合う相手である上の奥歯が、支えを失って徐々に下方に伸びてきます。伸びてきた歯は、下の歯茎に直接当たったり、食事の際に噛み込んだりして、歯がない部分の歯茎に痛みや傷を作ることがあります。また、伸びてきた歯自体も、歯周病になりやすくなったり、顎関節に負担をかけたりする可能性があります。さらに、隣の歯が「虫歯や歯周病になっている」場合、その炎症や痛みが、歯がない部分の痛みとして感じられる(放散痛)こともあります。特に、深い虫歯で神経まで炎症が及んでいたり、歯周病が進行して歯の根の周囲にまで炎症が広がっていたりすると、痛みの場所が特定しにくく、歯がない部分が痛んでいるように錯覚することがあります。また、ブリッジ治療などで、歯がない部分を補うために隣の歯を支えにしている場合(支台歯)、その支台歯に問題(二次虫شش歯、歯周病、歯根破折など)が生じると、結果的に歯がない部分(ブリッジのポンティック部)の周囲に痛みを感じることがあります。このように、奥歯がない部分の痛みは、周囲の歯との関連性も考慮する必要があります。歯科医院では、レントゲン検査や噛み合わせのチェックなどを行い、痛みの真の原因を多角的に探っていきます。自己判断せず、専門家の診断を仰ぐことが大切です。
隣の歯の影響奥歯がない部分の痛み