口内炎ができた時、痛みを和らげたり、早く治したりするために「塩水うがい」が良いという話を耳にすることがあります。古くから行われている民間療法の一つですが、実際のところ、塩水うがいは口内炎に対してどのような効果が期待でき、また注意すべき点はあるのでしょうか。塩水うがいに期待される効果としては、まず「殺菌・抗菌効果」が挙げられます。塩には浸透圧作用があり、高濃度の塩水は細菌の細胞から水分を奪い、増殖を抑制する効果があると考えられています。口内炎の患部には細菌が感染しやすく、これが炎症を悪化させたり、治癒を遅らせたりする原因となるため、塩水でうがいをすることで、口腔内の細菌数を減らし、感染のリスクを低減する効果が期待されるのです。次に、「消炎効果」や「粘膜の引き締め効果(収斂作用)」も期待されることがあります。塩水が炎症を起こしている粘膜に作用し、腫れを和らげたり、粘膜組織を引き締めたりすることで、痛みの軽減や治癒の促進に繋がるという考え方です。また、塩水うがいは、口腔内のpHを一時的にアルカリ性に傾ける効果もあると言われています。口内炎の原因の一つとして、口腔内が酸性に傾くことが挙げられるため、これを中和することで症状の改善に役立つという説もあります。しかし、これらの効果については、科学的なエビデンスが十分に確立されているわけではなく、効果の程度には個人差があると考えられます。また、塩水うがいを行う際には、いくつかの注意点があります。まず、「塩分濃度」です。濃度が高すぎると、かえって口内炎の患部を刺激し、強い痛みを感じたり、粘膜を傷つけたりする可能性があります。一般的には、コップ一杯(約200ml)のぬるま湯に対して、小さじ半分(約2.5g)程度の塩を溶かすのが目安とされていますが、これでも刺激を感じる場合は、さらに薄めるなどの調整が必要です。次に、「うがいの方法」です。強くガラガラとうがいをすると、患部を刺激してしまうため、口に含んで優しく全体に行き渡らせるようにし、静かに吐き出すのが良いでしょう。また、塩水うがいはあくまで「対症療法」の一つであり、口内炎の原因そのものを取り除くものではありません。