「塩で歯を磨くと口臭が消える」あるいは「口臭予防になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。実際に、塩で歯を磨いた後に、一時的に口の中がスッキリとし、口臭が軽減されたように感じることがあるかもしれません。しかし、その効果の持続性や、根本的な口臭解決に繋がるかどうかについては、慎重に考える必要があります。塩で歯磨きをした後に口臭が変化する可能性として、いくつかのメカニズムが考えられます。まず、塩の「殺菌・抗菌作用」です。口臭の主な原因の一つは、口腔内の細菌がタンパク質などを分解する際に発生する揮発性硫黄化合物(VSC)です。塩の浸透圧作用によって、これらの細菌の活動が一時的に抑制されれば、VSCの産生が減少し、口臭が軽減される可能性があります。また、塩味による「唾液分泌促進効果」も関係しているかもしれません。唾液には、口腔内の食べかすを洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用があります。塩で歯を磨くことで唾液の分泌が促されれば、これらの唾液の働きによって、一時的に口臭が和らぐことが考えられます。さらに、塩の粒子による「物理的な清掃効果」も、舌の表面に付着した舌苔(ぜったい:細菌や食べかすの塊で、口臭の大きな原因となる)をある程度除去するのに役立つかもしれません。舌苔が減れば、口臭も軽減される可能性があります。しかし、これらの効果は、多くの場合「一時的」なものである可能性が高いです。塩による殺菌効果も、その濃度や作用時間によっては限定的であり、口腔内の細菌を根本的にコントロールするには不十分かもしれません。また、唾液分泌促進効果も、歯磨き中の一時的なものであれば、持続的な口臭予防には繋がりにくいでしょう。舌苔の除去に関しても、塩の粒子で強く擦りすぎると舌の粘膜を傷つけるリスクがあり、専用の舌ブラシなどを用いた方が安全かつ効果的です。そして何よりも、口臭の根本的な原因が、治療が必要な歯周病や進行した虫歯、あるいは消化器系や呼吸器系の疾患などである場合、塩での歯磨きだけでそれらが解決することはありません。むしろ、塩による爽快感で口臭が改善したと錯覚し、根本原因の治療が遅れてしまう可能性も懸念されます。
塩で歯磨き後の口臭変化について