顎の痛みに加えて、原因不明の頭痛、顔面のしびれ、めまいといった神経症状が伴う場合、神経内科の受診を検討する必要があります。これらの症状は、単なる顎関節の問題だけでは説明がつかないことがあり、神経系の疾患が隠れている可能性を示唆しているからです。例えば、三叉神経痛は顔面の感覚を司る三叉神経に異常が生じる病気で、突発的で激しい顔面痛を引き起こします。この痛みは顎の周辺に現れることもあり、虫歯の痛みと間違われることもありますが、しばしば電気が走るような、刺すような鋭い痛みが特徴です。このような症状がある場合は、神経内科で精密な検査を受けることが推奨されます。また、側頭動脈炎という血管の炎症性疾患も、こめかみを中心とした頭痛や、食事の際に顎がだるくなる「顎跛行(がくはこう)」と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。これは高齢者に比較的多く見られる疾患で、放置すると視力障害に至る危険性もあるため、早期の診断と治療が重要です。神経内科では、このような血管炎の診断も行います。さらに、稀ではありますが、脳腫瘍や脳血管障害などが原因で、顎の痛みや顔面の感覚異常、運動麻痺などが生じることも考えられます。これらの重篤な疾患を見逃さないためにも、疑わしい症状がある場合は専門医による詳細な検査が不可欠です。顎の痛みと同時に、言葉がもつれる、物が二重に見える、手足に力が入らないといった症状が現れた場合は、脳卒中などの緊急性の高い状態も考えられるため、速やかに救急受診をする必要があります。顎の痛みの原因は多岐にわたりますが、神経症状を伴う場合は特に注意が必要です。歯科や口腔外科を受診しても原因が特定できない、あるいは治療効果が見られない場合で、頭痛やめまい、しびれなどの症状が気になる場合は、一度神経内科医に相談してみることをお勧めします。医師に症状の経過や詳細を正確に伝えることが、適切な診断と治療への第一歩となります。
顎の痛みと頭痛やめまい神経内かの可能性